フェルトバーンタイプBタンク組立記

ガレージキットのフェルトバーンタイプBタンク
のキットを組立・塗装しました。

説明書に従っての組立ですが、注意点も含めて
工作の顛末を披露いたします。

 

 
  ・フェルトバーンタイプBタンクとは
  
  
40年以上前に、西ドイツの鉄道模型メーカーのエガーバーンが、600mm軌間の
  産業用軽軌道(フェルトバーン)のBタンクを1/87,9mmで発売し、一躍有名になり
  ました。エガーバーン製品はその後ジューフ社が引き継ぎましたが、このBタンク
  は、再生産されることなく、今では伝説のものとなっております。
  今回紹介するガレージキットは、エガーバーンのBタンクを、より日本の風景に
  溶け込むように、デザイン的にアレンジしたものです。

 キットは大変組み易く、説明書どおりでなんら問題はありません。組立記の前に
 このキットを一度組み立てており、自分なりに苦労した点を踏まえています。
 これからキットを組まれる方に少しでも参考になれば幸いです。
  
 以下、制作上の苦労したことや注意点を主に、キットの説明書とダブらないように
 記述します。
  

 @エッチングパーツの切り離し
  
  パーツのランナーからの切り離しは、ニッパーを用いるのが一般的です。私の場合
  真鍮製ですと、デザインカッターで切り離すことが多いのですが、洋白製、それ
  も0.4tですので、時間がかかることは想像できました。一度目はおもむろにニッパー
  でパチン。切り離しの衝撃でパーツが歪みました。その経験から今回は衝撃が逃げ
  るよう、各部を糸鋸で切り離してからニッパーを使用しました。
  画像では分かりにくいのですが、参考までに載せます。糸鋸の使用時間は15分程度。

  忘れていました。パーツを切り離す前に、必要な穴あけがあります。
  小さなパーツになる前に、穴あけとネジ切りを済ませておきます。
  また、既に穴のあいた箇所もバリ取りをしておきます。

  切り離したパーツはバリ取りを行い、端面は耐水ペーパー(#400程度)の上で
  削ると、直線が出て簡単です。
  

 
 A床板補強部の端面
  今野さんの挨拶文にある、ワンポイントアドバイスに4つの矢印で示されていますが、
  折り曲げ後に端梁側に位置する端面はヤスリで削っておきます。でないと端梁が
  90度に曲がりません。折り曲げる前の立たせた状態で削ると良いでしょう。

  床板補強部の第一動輪上のクリアランスが僅かしかありません。念のため
  フランジ部分をモーターツールで削ってショートするのを防いでいます。
  でも左右のフランジが同時に接触することはないと考えられますし、塗装して
  あれば大丈夫とは思います。



 
 

 BNゲージフレームの加工
  KDカプラーを取り付けのため、説明書にあるものより後方を多く切断しています。
  動輪押さえ板もその長さに合わせています。前方は上回りのビス組立時に
  ドライバーが当たりますので、画像(下部分)のように丸ヤスリで削っておきます。

 
 C集電シューへの0.15燐青銅線の固着
  集電の補助接点として、Nフレーム装着の集電シューに燐青銅線をハンダ付け
  しますが、ハンダ付けを中央の一部だけというのは意外と難しく、燐青銅線の
  復元有効長を最大限に生かすために、中央に0.4mmの穴をあけ、二つに折り
  曲げた燐青銅線を、その穴に差込み、裏側でハンダ付けしました。
  この時、表側の燐青銅線の重なり部分にハンダが回ってしまったら、カッターで
  割り込むようにすると簡単に外れます。裏側は平らに削って下さい。
  ハンダ付け後、2方向に曲げます。
  穴あけは、中央適当な位置にポンチを強めにすれば、ピンバイスですぐあきます。
  ポンチ+穴あけで5分です。
    
 

 Dクロスヘッドへのメインロッド装着
  説明書では、カシメピンとメインロッドはハンダ付けするよう書かれていますが、
  文字通りたたいてカシメた方が楽と思います。クロスヘッドの穴は、カシメピン
  径の0.6ではカシメ後に(ハンダ付けも同様)、クロスヘッドとメインロッドに遊びが
  ありませんので、0.7mmにしておくと良いでしょう。
  当然ですが、ロッドには左右がありますのでカシメる時に間違えませんように。
  たたきは金槌で行いますが、たたきすぎに注意します。
  
 Eシリンダーのシリンダーブロックへの接着
  ホワイトメタル製のシリンダーブロックは、シリンダーを固定する部分を丸ヤスリ
  でバリを取っておきます。でないとピッタリつきません。
  水平、垂直は走行に影響しますので、十分気をつけます。
  画像のように適当な板に直線を書き、線上の適当な間隔にシリンダーブロックの
  ボスの入る穴(1.0mm)をあけます。シリンダーブロックを穴に差込み、エポキシを少
  し塗ってシリンダーを置きます。スライドバーの上部が大体線の真上にきますので
  上から、横から、斜めから、と万全にチェックして曲がっていれば、直します。
  接着剤は速乾性のものよりある程度硬化時間のかかるものがじっくりチェック
  できます。

  順序が逆になりましたが、シリンダーにスライドバーをハンダ付けしてから1.0mm
  穴あけを行います。その時にシリンダー前方から0.9mmドリルでスライドバーを
  切り取るように穴あけしてから、反対側から正規の1.0mmドリルでスライドバー
  を削るようにすると楽です。最初前方から1.0mmドリルを回しながら挿入していき
  ましたが、途中で動きが取れなくなり、ちょっと冷や汗ものでした。
  
  
  


                        
 Fキャブ屋根の曲げ
  説明書では「図のように万力を利用して・・・」とありますが、具体的に分からない方
  のために私の方法を紹介します。
  0.4tの洋白で、ましてやこの大きさですので、ちょっとやそっとでは曲がりません。
  前回のキット組立は焼きなまさず行い、筋がついてしまいましたので、今回は
  焼きなましました。ピンセット等でつまんでガス火で真っ赤になれば、あとはその
  まま自然冷却させます。少し黒くなりますが問題ありません。
  万力(マシンバイス)に適当なパイプと材料を挟み込み、左右両端から少しずつ
  手で押して曲げていきます。少しずつ屋根中央方向に位置を変えて全体にカーブ
  が付きましたら、キャブに乗せてみて、あとは現物合わせで、指先で修正します。
  
  なお、屋根は塗装の塗りわけを考慮して、裏側に2mm幅の燐青銅版をハンダ付け
  してキャブにバネを利かせてはまり込むようにしてあります(下記画像参照)。



 Gキャブの組立
  パーツの折り曲げが必要なところは曲げて、ハンダ付けするだけですので、
  難しいことはありません。
  ここで注意することは、キャブ内張り(ドア部分)の周囲のバリは必ず丁寧に
  削っておきます。でないと、キャブ後妻とコールバンカー後面がピッチリ入り
  ません。上回り取り付けビス穴の部分は曲げた後ハンダを流して強度を
  確保しておきます。
  サイドタンクは折り曲げ後に上辺部分と下辺部分は平面になるように耐水
  ペーパーで仕上げておくと良いでしょう。
  
 Hボイラー回りの組立
  先ず煙室サドルを固着しますが、その前に蒸気パイプの穴をあけておきます。
  ポンチマークがありますから、適当に斜めに0.7mmドリルであけます。
  煙室サドルの固定が済みましたら(このときドームが垂直になるように注意しま
  しょう)、0.7mmドリルで先ほどの穴をガイドにして煙室も穴をあけます。穴あけ後
  に0.7mm真鍮線を通し、接着剤で固着させます。
  接着剤が乾いたら余分な線をカットし、下面が平らになるように削っておきます。
  煙突用と煙室及び汽笛の穴をあけますが、ホワイトメタルはかなり粘っこいため
  ドリル、タップには注油し、ピンバイスでゆっくり回転させると安全です。
  なお、汽笛用のドーム上の穴は最初1.0mm(くぼみの内径)ドリルで軽く中心を
  出した後に0.6mmドリルで穴をあけると中心に穴をあけられます。

 Iボイラーとキャブの固着
  キャブにボイラーを接着材で固定しますが、ここで大事なことは接着剤を使用する
  前に床板にそれぞれビスで仮組立を行います。この時に床板のビス穴とキャブ
  ビス穴(ねじ切り)、床板のビス穴と煙室のビス穴(ねじ切り)の位置が合うように
  床板の穴を広げたりします。それでもボイラーとキャブ接着箇所がきついかも
  しれません。ボイラーのキャブ接着部分のバリ取りはもちろんのこと、少し
  削っています。

 

 J塗装のこと
  普通は塗装前にモーターを取り付け、動輪をセットして走行チェックを行うのですが、
  動輪の輪心を塗装する都合上、塗装を先に済ませました。
  画像のように竹串や爪楊枝をパーツ穴に差込、発泡スチロール箱に突き刺して
  塗装します。パーツの穴のどこを使用するかは、塗られていなくても影響のない
  穴、たとえば輪心ですとクランクピン穴といったところです。穴の無いパーツは
  ボスの入る穴を逆に竹串にあけ、差し込んでいます。
  スライドバーはマスキングしておきます。
  全パーツにシールプラマーを吹きつけて下地処理を行います。
  次に塗りわけを考慮した順番で吹き付けました。
  ちなみにエガーバーンのキャブ、ボイラーは黒一色です。
  −床板端梁箇所と輪心の赤
  −キャブのブルー
  −屋根のグレー
   マスキング後に
  −煙室回りと床板及びシリンダーブロックの黒
  すべて艶消しとしました。
  端梁のマスキングは床板の先端が視覚的にちょっと出ているようにしています。
  エガーバーンのBタンクと同じです。マスキングも端梁一周だけで楽です。
  塗装が済んだところでマスキングテープをはずして、汽笛を接着します。
  ヘッドライトレンズも入れておきましょう。



 K全体の組立
  塗装後に先ず、輪心をはめ込みます。絶縁側(平ギャ側)が左になりますので
  実物どおりに右側のクランク位置が90度進むようにしましたが、重要ではありま
  せん。大事なのは2軸の位相が合うことです。それも厳密にする必要はありません。
  大体で大丈夫です。ちなみに私が行った方法は。
  −絶縁側の車輪に輪心を瞬間接着剤で固定
  −絶縁側のクランクピン穴の延長上のフランジにペンで印をつける
  −印と同じ位置に反対側の車輪のフランジに印をつける
  −反対側車輪の側面にフランジにつけた印を基準に90度の位置(たとえば
    フランジの印を上にして右90度)の車輪側面に印をつける
  −車輪側面の印の位置にクンクピン穴がくるように輪心を接着剤で固定する。
 
 輪心は塗装前にバリ取りはもちろんのこと、周囲を削らないと入らないと思います。
 したがって、きつめにはまり込むことになりますので、硬化時間の長い接着
 材を使用しても修正がきかず、ある意味一発装着になります。

 シリンダーをフレームに固定しますが、この時も水平、垂直に十分気をつけて
 下さい。
 
 車輪の装着は、第一動輪のロッドピン止めで、スライドバーがちょっと邪魔になりま
 すので、第一動輪の左右にあらかじめサイドロッドをネジ止めしてから、第一動輪を
 フレームに入れ、第二動輪はある程度位相を揃えてはめ込みます。
 中間ギャや集電シューはもちろん最初にセットします。
 動輪をセットするときに集電補助の燐青銅線を引っ掛けないように注意します。
 次に動輪押さえ板をはめ込み(後ろからはめ込んで、前がパチッと言う前)、
 ここで位相を正確に揃え、押さえ板を完全にはめ込みます。
 次に第二動輪にロッドをつけますが、この時にメインロッドがサイドロッドと無理なく
 合わさるか確認します(ここで前述の遊びが生きてきます)。サイドロッドから離れて
 いるようでしたらメインロッドを曲げて調整します。
 ピンをねじ込んで回転をチェックします。ここでスムーズに回ればOKです。
 ピストンロッドの先端は、クロスヘッドが一番前方の位置でシリンダーからはみ
 出した分をカットします。フレームを床板に取り付けますが、ビス1本ですので位置を
 調整して締めます。
 床板にモーターをビス止めした後(多分そのままですとモーター位置が低い可能性
 があります。当初から穴の上部を少し広げておいた方が良いかもしれません。)、
 配線を行います。ハンダ付けはすばやく行い、プラを溶かさないよう注意します。
 忘れるところでした。モーター軸のカットは、最初ニッパーでやりましたが(細いので
 大丈夫だろうと)、見事刃が欠けました。そのため常套手段のモーターツールの
 円盤砥石で切断しました。皆様も十分ご注意を。
 集電シューの外から見える箇所が気になる方は、黒で塗っておきます(作例では
 エナメルのフラットブラック筆塗り)。

 最後に上回りと下回りを固定して、線路に乗せて試験走行です。
 ちなみに一発で動きました。メデタシ、メデタシ。
 カプラーはKD1025です。ポケットの一部をカットして(前:上回り取付けビスの頭、
 後:フレームをそれぞれ避けています)装着しています。
 
 
                完成写真(横はエガーバーンの倉庫)

[ホーム]